トレジャーデータ、ナノベーションの「熱狂度」の高いコミュニティーを高評価。
一緒にマーケティングの未来をつくる
トレジャーデータ株式会社
- 業種
- 情報・通信業
- 担当者名
- CMO 宮野 淳子さま
AIネイティブカンパニーとして音声データ活用をはじめとする新領域のプロダクト開発を加速させるTreasure AI。顧客データ基盤(CDP)のグローバルリーダーとして、世界中の企業のマーケティングを支えています。同社が国内マーケティング活動の要として位置づけているのが、「マーケティングアジェンダ」などのカンファレンスを主催するナノベーションとのパートナーシップです。
「導入前に価値が見えない」というAIビジネスに共通する構造的課題に対し、同社はカンファレンスという場をどのように事業成長へつなげているのか。ナノベーションとの取り組み、そして今後の協業構想について、トレジャーデータCMOの宮野淳子氏に聞きました。
「使ってみるまで価値が見えない」SaaSビジネスに共通する構造的課題
トレジャーデータのマーケティング組織は、認知獲得・ブランディングからリード獲得までを一貫して担い、その後に営業組織が動くという明確な役割分担のもとで設計されています。カンファレンスへの協賛・登壇も、この構造に組み込まれた戦略投資です。
「当社では、マーケティングと営業部門で同一のデータ基盤を共有しています。認知とリードをマーケティングが取らない限り、営業は動けません。だからこそ、このイベントに出たらどれくらいのリードが取れるのか、既存のお客様とどれだけエンゲージメントを深められるのかを、営業と一緒に数値化しています。それによって営業が漏れなく的確なアプローチをかけられる体制にしているんです」と宮野氏は語ります。
宮野氏は、トレジャーデータに参画する前は長くブランド企業側でマーケティングを率い、在籍した会社でトレジャーデータを導入し、成果を出してきた経歴の持ち主です。
「私自身、過去のキャリアにおいて最も多くトレジャーデータを導入してきたと自負しています。親会社や経営陣に提案して断られた経験も含めて、買う側が何に不安を感じ、何があれば意思決定できるのかを実体験として知っています。それが今のトレジャーデータのマーケティング戦略の土台になっています」(宮野氏)
CDPというプロダクトの特性上、トレジャーデータのマーケティングには固有の難しさがあります。それは、CDPがいわゆる「SaaS(クラウド型ソフトウェア)」であることに起因しています。
「化粧品であれば、サンプルを試して効果を実感してから購入できます。しかしSaaSは、使う前に価値が見えず、使って結果を出すまで効果が分からない商品です。決して小さくない投資を、導入前にどう『買いたい』と思っていただくか。これは当社だけでなく、おそらく全てのSaaS企業が抱える共通の課題です」(宮野氏)
しかも同社のCDPは、導入企業それぞれのマーケティング戦略に合わせて設計する必要があり、画一的な説明では価値が伝わりません。加えて宮野氏は、買い手であるマーケター側にも構造的な課題があると指摘します。デジタルマーケティングの担当者は社内で役割が理解されにくく、部門として孤立しやすいポジションに置かれがちだと言います。
「マーケティングアジェンダのような場に行くと、同じ立場の仲間が集まっていて、お互いにサポートし合えます。社外の人を自分たちのチームメンバーのように率いて、一緒に成長していくことができます。私自身、ブランド側にいた頃からその価値を実感してきました」(宮野氏)
売り手にとっては「体験できない商品」の価値をどう伝えるか。買い手にとっては孤立しがちな環境でどう学び合うか。この両方の課題を同時に解決する場として、ナノベーションのカンファレンスを位置づけています。
「熱狂度」の高いコミュニティーが生む信頼
数あるカンファレンスの中で、なぜナノベーションと継続的に組むのか。宮野氏の話を、大きく3つのポイントに整理します。
① 事前審査制が担保する「意思決定できる参加者」の質
「ナノベーションのセミナーの多くは事前審査制で、参加者の役職レベルや企業レベルがしっかりとスクリーニングされています。しかも毎回同じ顔ぶれにならないよう調整されています。幅広い方とお話しできるうえに、弊社の商品に興味を持ったときに、実際にアクションを取れるレベルの方がいらっしゃる。ここがまず大きいですね」(宮野氏)
② アクティビティーを組み込んだ「時間を共にする」設計
「セミナーだけでは、どうしても一方的な売り込みのプレゼンテーションになってしまいます。ナノベーションのイベントには参加者同士で楽しめる食事や体験型のアクティビティーが組み込まれていて、楽しい経験としてエンゲージメントが生まれます。人と人とのつながりが強くなるのは、この設計があるからです」(宮野氏)
③ 「熱狂度」の高いコミュニティー
他社のカンファレンスとの違いを、宮野氏は「熱狂度」という言葉で表現します。
「学びに対する意欲と、横のつながりを大切にする意識。その両方を持った参加者が多いのがナノベーションのイベントの特徴です。当社はAIネイティブカンパニーとしてAIを加速させる立場にいますが、AIが進化した先の世界では、リアルでの人とのつながりの価値がむしろ高まると考えています。ご飯を食べる、アクティビティーを共にするといった時間から信頼が生まれ、お互いをサポートし合う関係になれる。それをつくれるのがナノベーションのカンファレンスです」(宮野氏)
こうした信頼を象徴する取り組みが、昨年のマーケティングアジェンダ沖縄です。トレジャーデータは、米国の大手百貨店ノードストロームのシニア・バイス・プレジデント(テクノロジー)を務めるミーガン・キースター氏を日本に招き、共同登壇を実現しました。
「目的は2つありました。1つは、グローバルリーダーとして世界の大手企業に導入いただいている実績を日本で示し、安心と信頼につなげること。もう1つは、日本のマーケターの学びへの貢献です。海外の事例は、特にエグゼクティブほど求めているのに入手が難しい。その事例を、日本のマーケティング責任者が集まる場で提供することに意味があると考えました」(宮野氏)
登壇は好評を博し、キースター氏はその後のAIマーケティングカンファレンスにも登壇。言語の壁がありながらも、多くの参加者と名刺交換や対話の機会を持てたことは大きな成果だったといいます。「今、海外のマーケターの間で日本は非常に人気です。海外のイベントに行くと『日本で登壇したい』という声を本当に多く聞くので、またいい方をお呼びしたいですね」と宮野氏。海外の知見を日本市場に還流させるハブとしても、このパートナーシップは機能し始めています。
新規開拓と既存深耕の両方を支える基盤に
では、どのようにナノベーションのカンファレンスを効果的に使っているのでしょうか。
「登壇はあくまで興味を引きつける入り口です。お客様と一緒に登壇することで、実際の活用イメージを持っていただく。その後の交流の中で『御社ならこういう使い方ができますね』と個別にお話しする。登壇で引きつけて、営業がフォローし、一社一社にパーソナライズしていく。この流れが重要なんです」(宮野氏)
その入り口の質を左右するのが、「誰を登壇させるか」という事前設計です。
「買う側もマーケターですから、マーケティングを分かっている人から買いたいわけです。特に上の層になるほどそうです。だから登壇には、私をはじめマーケティング出身のメンバー、そしてお客様ご自身に立っていただく。マーケティングを長年やってきた人間がトレジャーデータを使って実績を出しているという話が、まず信頼をつくります」(宮野氏)
この設計は着実に成果を生んでいます。カンファレンスをきっかけとした商談化は新規・既存の双方で生まれており、顧客側から声がかかるケースも少なくないといいます。アパレルや出版といった顧客企業との共同登壇も、双方の関係深化につながってきました。
また、実際、取引の継続が難しくなりかけていた既存顧客と会場で対面したことをきっかけに関係が再構築され、契約継続に至ったケースもあるといいます。メールや営業経由のアプローチでは動かなかった関係が、対面の場では動く。カンファレンスはトレジャーデータにとって、新規開拓と既存深耕の両方を支えるリレーション基盤になっています。
今後の展望 ― AI時代の「協業」へ
設立10周年を迎えたナノベーションについて、宮野氏は日本のマーケティング業界への貢献を評価しています。
「マーケティングとひとくくりにされる職種の中には、デジタル、ブランド、CRMなど多様なポジションがあり、光が当たりにくいけれど会社にとって重要な役割を担う方もたくさんいます。そうした方たちも含めた全員の地位向上に貢献してきた会社だと思います。もう1つは、日本のマーケティングをどの方向に推進していくかをリードする存在であること。ノードストロームの方をナノベーションさんの場にお呼びしたのも、そういう会社であると信頼しているからです」(宮野氏)
そして最後に、日本企業への視点を添えました。
「日本の会社はプロダクトが素晴らしい一方で、戦略が二の次になりがちです。戦略を重視する海外の事例を日本のマーケターが理解し、日本企業が海外で強くなるためのインサイトを得られる場に、ナノベーションさんのイベントがなっていくといい。そこに弊社も一緒に貢献していきたいと思っています」(宮野氏)
導入前の信頼をつくる場として、そして日本のマーケティングの水準を引き上げる共通基盤として。トレジャーデータとナノベーションのパートナーシップは、次の10年に向けて新しい協業のフェーズに入ろうとしています。




